2009/04/30
前作の「CASSHERN」で衝撃を受けた紀里谷和明監督の新作「GOEMON」の公開を記念した監督主催のワークショップに参加してきました。
紀里谷監督の作品はその映像があまりに独創的ゆえ美術面ばかりが大きく取り上げられることが多い中、僕が「CASSHERN」を観た時に感じていた「人間の心にフォーカスした作品作り」への想いを直接聞けると思ってワクワクしながら会場に向かいました。
ワークショップはティーチインという形式で会場のみなさんからの質問に紀里谷監督が答えていくというものでした(僕も一つ質問しました)。
監督はどんな質問にも真摯な姿勢で具体例やユーモアを交えて分かりやすく答えてくださって、彼の中に流れる美学や哲学がまっすぐな言葉となってこちらに伝わってきました。
以下、彼の言葉と僕の感想をミックスさせてメモしておきます。
仕事でも日常生活でもすべての基本は『コミュニケーション』である。相手を認め、受け入れればそこに信頼が生まれ、良好な人間関係が築ける。
情熱は(作品を作る上での要素である)予算や技術など全てに勝る。しかしそれぞれの要素も重要であるからしっかり考慮する。
人は一人では生きていけない。誰もがたくさんの人に支えられて生きている。感謝の気持ち、思いやりの気持ちを持てば世の中は今よりもっと良くなる。
世の中に普遍的な正解などない。自分にとっての正解は自分の直感であり、それは人それぞれ違う。自分の考え・行動に自信を持つことで軸ができる。
やる前からあれこれ心配するくらいなら、とりあえずやってみる。うまくいくこともあるが失敗することもある、しかし全ての経験が糧になる。
今までにないものを作ることは生みの苦しみを伴うが、至福の喜びが得られる。
人・物・技術、既成概念を捨てて自分の心の赴くままに考えを巡らすことで無限の可能性が広がる。
人伝え・メディアなどの二次情報に安易に頼ることなく、自分で見て聞いて感じることで本質が理解でき価値判断のベースを作ることができる。
目の前で取り組んでいることに対して自分の可能性を極限まで追求することによってより高い次元に進むことができる。
メモは以上です。
見た目や立ち振る舞いがクールな印象で少しとっつきにくい感じかなと思っていた紀里谷監督ですが、実際にワークショップでお話してみると全く逆で、とにかく人を大切にして人の可能性を信じている暖かいかただなということが分かりました。
2時間という限られた時間の中、非常に濃密で感動的なひとときを過ごすことができました。一生忘れないと思います。
映画の感想
(2009/5/1追記)
公開初日にさっそく観てきました。
既成概念を完全に壊した映像表現、時代設定。前作の「CASSHERN」と同様、まずはそこに釘付けになりました。ここまで徹底的に独創的になるからこそファンタジーとしての映画が活きると感じました。
戦国時代おなじみの武将や忍(しのび)などが登場するものの、史実をいい意味で無視した部分も多くストーリーもまた独創的でした。
登場人物はみな立場が違っても自身の生き様に軸を持っていて、それが結果的に悲劇を迎えようともそれぞれの心の声に従って行動していく、そのひたむきさに心打たれました。
そして複雑な展開にも関わらず作品全体を通して貫かれていたもの、それは「悲しみや憎しみといった負の感情を起点にした行動は何も生み出さない。人間は幸せにならなければいけない」ということでした。
それが天下人であれ民衆であれ、みな等しく持つべき拠り所で、絶対に見失ってはいけないという強烈なメッセージでした。
思えばワークショップで紀里谷監督が「みんなが少しずつ人に優しくできたら世の中は今よりもっとよくなる。だから僕はそのことを少しでも多くの人に知ってもらいたくてこんな活動をしている」というお話をされていましたが、まさにこのことを映画を通して具現化しているんだなと改めて感じました。
GOEMONは世界配給が決まっているそうですが、人間にとって普遍的なこのメッセージが多くのかたのもとに届いてほしいと切に願っています。
(2009/5/5追記)
GOEMONを観たかたの感想が「素晴らしい」という人と「まったくの駄作だ」という人に分かれていて興味深いです。
(参考)
mixiのGOEMONコミュのGOEMONの感想トピック
Yahoo!映画 - GOEMON
映画生活 - GOEMON
前作の「CASSHERN」でもそうでしたが、紀里谷作品の特徴はいわゆる常識を越えた作品作りだと思います。
GOEMONでいえば、
史実を無視している
時代考証(衣装や建築物や言葉遣いなど)を無視している
人間の運動能力の限界を無視している
CGは通常、表現をリアルに近づけようとするがそれをあえてCGっぽく見せる
といったことを意図的にやっています。紀里谷監督本人がワークショップでそうおっしゃっていました。
既成概念・固定観念を超越することによってとんでもなく荒唐無稽な作品になるわけですが、これをエンターテイメントと捉えるか、リアルにほど遠いゲームのようだと捉えるか、人によって様々だと思います。
映画を芸術作品と捉えた場合、観る人によって評価が異なるのは当たり前で、だからこそ人の意見に惑わされることなく自分の意見(価値観)をしっかり持てるかどうかを試されているような気がします。
(2009/5/6追記)
紀里谷和明ワークショップ感想まとめページを作りました。ワークショップに参加したかたがたの感想をまとめていきます。
関連情報(Google検索)
