ドラえもんの道具にUIの真髄を見た

2010/03/18

今年もドラえもんの映画の季節です。

毎回欠かさず観ている僕はストーリーそのものに加え今年はどんな発想で作品を作っているんだろうという目で作品を見るのも楽しみなわけですが、今回は架空の水を作り出して専用のメガネをかけると実際の水として機能するという「架空水」がキーポイントでした。

ドラえもんの道具をUIとして見た場合、先進的な機能を盛り込みながらもメタファーは現実世界に存在する馴染みのある物を必ず使っています。そして一道具一機能に徹しているために操作はシンプル。説明書はまったく必要ありません。

今回の架空水を作り出すポンプにしてもスイッチ一つで動作する道具なので見た目はどんなデザインでもいいはずなのに敢えてポンプの形状に仕上げてあり、一見意味のない機構であるレバーまで実装しています。これによって「ポンプの形をしていてレバーがあるからこれを押せば水が出るんだな」ということが容易に想像でき、迷わず使うことができます。

古くはどこでもドアなども同じ発想で、敢えてドアの形の道具にすることで「この扉をくぐるとどこかに行くんだな」ということが想像でき、しかもわざわざノブをまわしてドアを開ける行為までさせています。行く先を何かに入力する訳でもなく命令する訳でもない、単に頭で考えた行き先をドアが検知して、あとはドアを開けるだけというシンプルで誰もが知っている操作体系に帰着させています。本来なら命令者の特定や現在地点と行き先地点の紐付け、物質転送処理などの複雑な制御が必要なはずですが、利用者にはそれをまったく感じさせずむしろ親しみを感じさせる作りになっています。

現実世界でも今後様々な技術発展が続いていくと思いますが、UIが最終的に行き着く先は、見た目と機能が一致しひたすらシンプルな操作を可能とするドラえもんの道具なのかもしれません。

ITエンジニアである我々も多機能や目新しさの罠にハマらないように常に利用者目線でモノ作りをしていく必要があるなと改めて思いました。